休暇
所用で静岡に来ている。
暮でなかなか予約の取れない中、富士山の見えるこじんまりとしたビジネスホテルに宿泊予約を入れたのは外国人である夫だ。
ここで時々仕事をしながら次男のサッカー観戦をする予定。
荷物は極力減らしてはきたものの、約1週間ほど滞在する予定なので、荷物もまあそこそこある。
チェックインを夫に任せ1人ロビーで荷物の番をしながらも、やはり気になるのは夫の様子。
夫は30年住んでいる割に、日本語があまり得意ではない。
とはいえ、ロビーには他にも数名の外国人観光客がおり、ホテルの至る所には英語表記の注意書き、案内などもある。まあ大丈夫かなと思い耳をそばだてるも、聞こえてくるのは若いフロントの男性の少し速めの日本語の声ばかり。
夫の容姿が、少し彼を緊張させてしまったのかもしれない。
念のため、あとで軽く説明できるよう一通り遠くからザックリ聞いておく。
基本的に夫が日本語で対応している場合、呼ばれるまで私は、極力彼の側に行かないようにしている。
それは私がいることで、夫がただの財布のような役目になってしまうことが多々あるからだ。コンビニで彼が会計をする時でさえ、隣にいる私にお釣りがくる時がある。皆、無意識のうちに夫を避けてしまう。
夫も大の大人、買い物ぐらい自分一人でしたいのだ。私なりの気遣いである。
とはいえ、やはりホテルは非日常を楽しめるところ。
実際ロビーには幾人もの外国人観光客や宿泊客の姿も見え、英語に明るいスタッフがいれば気分は更に上がるし、何より夫に易しい。笑
Good afternoon, sir.
なんて声をかけてくれたら、夫も喜んで英語で対応したことだろう。
無事チェックインを終え、戻ってきた夫の後ろに欧米人と思しきカップルが続く。通り過ぎさま聞こえてくるのは、やはりフロントの男性の声。
カップルは分かりやすく単語単位の英語で確認をとっているようだったが、フロントの彼はそれを丁寧な日本語で折り返す。
穏やかな物腰でそれはそれで素敵なのだが、そこに英語が加わればその素敵度は更に増す。
名刺でも渡そうか。笑
都内で英会話スクールを営む私。ここにはかなり需要がありそうだ。
非日常どころか、急に商売っ気も出てしばし現実に戻される。
静岡での休暇も始まったばかり。
まずは部屋でコーヒーでも飲んで、それからゆっくり羽をのばすとしよう。