夫婦円満の秘訣

出会った頃は、穴の空いたシャツを着て待ち合わせ場所に堂々と現れた夫も、30年の時を経て大のお買い物好きに変貌した。

愛読書？はレオンである。

私はというと買い物はあまり好きな方ではない。

ウィンドーショッピングなんて以ての外。目的もなしにただ人混みの中を歩き回るなど、私には到底考えられない。最も苦手とするところだ。

私にとって買い物はスーパーに買い出しに行くのと同じこと。必要な物を必要な時に、それら商品を扱っているお店に出向くこと。靴が欲しければ靴屋へ行き、気に入った物があれば購入する。それだけのこと。

偶然を装ってか？滞在しているホテルはアウトレットモールからほど近く、夫は到着時からソワソワしている。

三が日からアウトレットなど、絶対に行かないよ。

夫がニヤリと意味深にこちらを見るたびに、そう答えてきた。

繰り返し言うが、私は人混みと目的のない買い物が苦手なのである。

あまりにしつこいので周辺道路の混み具合を検索してみる。今のところ特に大きな渋滞は見られないようだけど…

次男の試合は午後から。

万が一駐車場から出られないほど混み合い、試合を見逃しては元も子もない。昼まではゆっくりそれぞれの仕事をしながらホテルに滞在し、まずは試合観戦。その後のことはそれから考えようと少し含みを持たせて夫を説得。

OK.

次男の初戦は３−０の完封勝利！

夫だけでなく私の機嫌も良かったので、ついにGOサインを出す。アウトレットへ出発だ。

試合会場からホテル周辺まではスイスイと進んだけど… 

あぁ。

そうだよね。ショップに近い駐車場へ続く道は大変なことになっている。さすがの夫も諦めたその先に、新たに別の駐車場へのサインが。迷わず右折する夫に徐々に遠ざかって行く目的地。一体駐車場はどこなのか？

夫は20分だと言い張るが、軽く30分は歩いたと思う。

ここのところ運動らしき運動をしていなかったので、まあよしとしよう。

一向に動かない車の中で夫の苛立ちを肌で感じながら、時に延々と天に向かって浴びせる夫の罵詈雑言を間近に聞かされるぐらいなら、歩く方が精神的に遥かにマシである。

一方の夫は、ほんの数メートル動くのにどれだけかかるか分からない車の中で、ただじっと座って待っている人達の気が知れない、とウキウキとした足取りで幾重にも連なる車の波を追い抜いて行く。

私に言わせれば、混むと分かっている場所へわざわざ歩いてまで行くあなたの方の気が知れないけどね。

ようやく目当てのショップが見え始める頃、辺りはとうに暗くなっていた、にも関わらず、この人人人。未だ整理券を持って、入り口前に並んでいるショップも幾つかある。

特に買いたい物がある訳でもないので、行き先は夫に任せる。彼の入る店について行き、夫よりも先に出て来る。笑

いつものことではあるが、こんなことを繰り返していたら、さすがに夫も気を遣ったのか、ご飯でも食べて帰ろうかと言う。

入りたいレストランは幾つかあったが、何しろ人がね… 多すぎるのだ。

気がつけば雨も降り出して、次々と人が店内に吸い込まれて行く。食事くらい少し静かでゆったりとした空間の中で食べたかったので、雨の中アウトレットを後にすることにする。

駐車場へ続く道は未だ混雑したままだ。私たちが出発してからどれだけ進んだかは分からないが、車の中の人たちはきっとずぶ濡れの私たちを見て笑ったことだろう。

私もおかしくて笑ったぐらいだ。

夫は自分一人だったら確実にもっと見て回ったと言っていたが、ひとまずアウトレットへ来るという目的は達成したし（させてもらえたし）今度は自分が歩み寄る番だと。

夫婦円満の秘訣とは、やはり双方の歩み寄り、落としどころを見つけることかなと新年早々思う。こども達も大きくなり夫婦だけの時間も否応なしに増えてきた。

今年も仲良く過ごせますように。雨降って地固まる、かな。